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ウヴェ・フリック著、小田博志監訳『質的研究入門 〈人間の科学〉のための方法論』(旧版)第2章(要約)

このメモは旧版の『質的研究入門』に拠っています。

こんかいは触れませんが、第1章の構成は以下です。

第1章
質的研究とは何か−−その意義、歴史、特徴
・質的研究の意義
・量的研究の限界を自覚する
・質的研究の基本的特徴……研究対象に適した方法と理論を用いる、当事者の視点とその多様性、研究者の側の反省(リフレクション)、研究アプローチと方法の多様性
・質的研究の歴史(☆重要)
・研究プロセスに関連づけた質的研究の紹介
・近代の終わりにおける質的研究

個人的には「質的研究のムーブメントは(計量化の過程で失われた質的要素の)ルネッサンスである」という記述(うろ覚えですが)が、なるほど(引き寄せに来てるな)、という感じだった。
(旧い記述というのもあって「質的研究」それ自体の(学問領域内での)政治性、ムーブメント性を感じましたが、まあそんなことはともかく第2章以降をみていきましょう)


第2章 理論的立場

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(表2.1より引用、筆者改変)

これがよいまとめになっている。

まず対象のどの点に着目して記述を行うかによって
・主観的な視点
・社会的現実の構築
・社会的現実の文化的枠付け
の3つに分類し、それぞれについて
・伝統的な理論的背景
・社会科学における近年の発展
・心理学における近年の発展
が1つずつ紹介されている。

 

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(表2.1より引用、筆者改変)

つまりは質的研究における伝統的な理論背景の
・象徴的相互作用論
エスノメソドロジー
構造主義精神分析
がそれぞれ
・主観的な視点
・社会的現実の構築(文中では≒二者の相互作用といわれていた。私もとりあえずそういう理解をしています)
・社会的現実の文化的枠付け(まさに≒(構造主義てきな)構造への視点。主観的視点、二者の相互作用、いずれをも包括する(ところの外部に目を向ける)視点である)
という視点の違いにより分類可能で、

その後の社会科学(社会科学・心理学)の流れをこの3つの視点の違いにより分類したよーというのがこの第2章なのだろう。

それぞれのアプローチについては省略。

共通する特徴について、説明が必要と思うので、要約は以下。


基礎としての現実(リアリティ)構築
主観的な視点も、二者の相互作用への視点も、構造への視点も、(定まった現実がすでにわたしたちに対して現前しているのではなく)ある「行為者(actor)」によって現実が「構成される」(現実とはプロセスである)という理解では共通している。(大まかに言えば、3者の違いは、それ(現実を構成する主要なActor)が何であるかーー主観的な視点であるか、二者の相互作用であるか、構造であるのかの違いだ)

出発点としての事例再構成
「比較や一般化をする前に、個別の事例をある程度の一貫性をもって再構成することである」(p.34)

実証的資料としてのテクスト
対象の内面に迫ったインタビュー録にしろ、会話分析の文字起こしにせよ、構造についての詳細な記述にしろ、質的研究においてテキストベースでの分析は欠かせない。