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ウヴェ・フリック著、小田博志監訳『質的研究入門 〈人間の科学〉のための方法論』改訂版第19章(要約)

19章『データとしてのドキュメントの利用』
本章の要約は以下

  • ドキュメントは種々の方法により分類される
  • 研究において利用されるドキュメントは、それがおかれた社会的・実践的文脈の中においてのみ理解されるべきである
  • 関連して、ドキュメントは単なる現実の複製以上のものである。その内容のうちに文脈に由来するさまざまなバイアスを含んだ、コミュニケーションの一手段であると捉えるのが(特に社会科学の)研究上、有益ではないか。
  • ドキュメントの利用方法の概略(ドキュメントを選択し、コーパスを構築する。ドキュメントが「誰にどんな意味を持つか」についての記述は個人的に重要と受け取られた)

ドキュメントの分類

ウェブらとリーらによる区別(Webb, Campbell, Schwartz and Sechrest 1966; Lee 2000)

  • 継続的記録……行政処理を記録するために作成されるもの
  • 逸話的・私的記録……個人が継続的にではなく、機会に応じて作成するもの

カルテ研究とナラティブ・メディスンに照らして理解するなら、前者が医師の公式の業務記録としてのカルテ、後者がカルテから離れて医師の個人的感情・思いを記すparallel charts ということになるだろう。

スコット:アクセス可能性からの分類(Scott 1990:14-8)

  • 非公開(例:総合診療医の作成したカルテ)
  • 制限付きのアクセス(裁判記録)
  • 文書館で公開されるアクセス
  • アクセスが出版によって公開となっている場合

コーパスの構築

ドキュメントの意味の分類

フリックは

  • ドキュメントの著者が意図した意味
  • ドキュメントと関わりをもつさまざまな読者にとっての意味
  • ドキュメントで取り上げられた人物にとっての社会的意味 の3つの意味があるとしている。

ドキュメントは現実の複製ではなくコミュニケーションの手段である

  • 省略。

詳述は避け、要約にとどめてあります。 自主研究では直接、発表はしませんでしたが、研究の過程でカルテというドキュメントを扱う機会があった(ご協力いただいた方にあらためて感謝を申し上げます)ので、自分の研究を振り返りつつ読みました。 とりわけ「ケース19.2 専門職養成のドキュメント分析」が、自分の以前志していた研究と関心・手法が近いものだったため、興味深く読みました。